今週のお題「卒業」

ある年の春、某日


田畑のど真ん中にある、土の香りのする高校を卒業した私は、
憧れの街で大学生活を送るため、生まれた家を離れる。


母とは家の玄関で別れ、当時付き合っていたボーイフレンドが駅まで車で送ってくれるという。
お天気はあまりよくなくて、グレーの雲が広がる。泣きそうだ。


駅まではいつもの道ではなく、遠回りになる土手の道を彼は選んだ。
両脇は満開の桜、どこまでも、どこまでも花道が続く。
ああ、私はずっとこの風景を忘れないだろう。


彼は、会うたびに素敵な歌や音楽を紹介してくれたけど、
この日、「本当にこのアルバムがよくてね」
と車でかけてくれた1曲目が、
トーマス・ベックマンのチェロが奏でる、チャップリンのライムライトだった。
チェロの音色は、暖かく哀しく切ない。


そんなグレーの空と、淡い桜と、チェロの音色
私の卒業イメージ3点セット。



Oh! That Cello

Oh! That Cello